中学校 同窓会のファン
実験部門の意見を確かめる意味で、内装デザイン担当のAなどは、紙でメーターのモデルをつくって自分のクルマのインパネに置いて走って実際にその感覚を調べてみた。
そして、いろいろの素案が登場した。
左右対称のインパネのスケッチだけでなく、すこし対称からズラしたものもあり、スケッチはかなりの数にのぼったが、最後に選ばれたのはドアから回り込んだソフトな面が左右対称に配置され、フロントガラスの直下に薄いデジタルメーターを置いたものになった。
生産システムを徹底的に見直すデザインがほぼ固まってきたころ、『BR−VF』も第二世代に入った。
一九九六(平成八)年一月に、ハイブリッドシステムの仕上げ役となった八重樫武久が登場する。
彼はシニアスタッフエンジニアという役職で、どHV(エレクトリック&ハイブリッドビークル・エンジニアリング)技術部に所属している。
Uたちのチ−ムのメンバーではないのだが、プリウス搭載のハイブリッドシステムに関する総責任者のような立場である。
はっきりいってすべてが手探り状態のハイブリッドシステムなかでも、開発陣がもっとも苦労したのは、電池の性能に関するものだった。
ニッケル水素電池そのものが新しい枝術であり、プリウスへの搭載が決定した段階でも、まだまだ改良できる状態、ということは未完成を意味するからだ。
エンジンの開発は昔から手慣れたものであったし、その働きは非常に複雑に感じられる遊星歯車を応用した動力分割装置も機械工学的にいえば、既存の技術だから、試行錯誤を繰り返すということはなかった。
ただ、ハイブリッドでやると決まったとき、難航が予測されたのは電気の技術、とりわけニッケル水素電池そのものの性能と、それに電力を出し入れする制御の技術であった。
必要とされる電池の容量・能力については、クルマそのものの性能を決め、プロジェクトとしての構想を立てた。
ところが、なかなかそれが達成してくれないのである。
その電池を積んで商品としての実験を進めなくては、発売の期日に間に合わなくなるギリギリの期限が迫ってきても、考えていただけの電気失口量が出ない。
T自動車側とM電池側との合弁で、ニッケル水素電池の開発・生産を行う会社が設立されていた。
UやYはもともと機械畑の人間なので、電池の技術についての知識はこのプロジェクトに加わってからのものだ。
技術者は大丈夫です、といっていましたが、自動車本体のほうの計画をスタートさせる段階では、電池のほうは計画していた性能の約半分しか出ていませんでした。
もしそのままということになると、バッテリーのサイズを倍の大きさにしなければならないわけですが、そんなことになればボディの部材の設計を大幅に変更する必要が出てきてとても間に合いません。
しかし、電池の完成を待ってはいられないので、いわゆる見切り発車でやったのですが、このときばかりはさすがに不安でした」と冷汗ものだった当時の状況をUは正直に語っている。
電池の能力とともに、ハイブリッドシステムに組み入れたときに電池をどのように。
具体的にいえば、どのくらい冷却してやったら性能劣化を抑えこむことができるのか、という問題や、充放電の管理に関するものがはっきりしなかった。
Uはこんなことを二一日っている。
イメージスケッチから、実物大のモデルがつくられ、それが審査を受ける対象となる。
審査の途上ではA案と呼ばれた採用実がこれ。
モーターショ−に展示されるコンセプトカーなみの新しい感覚のものになった。
中央に据えられたモニターは、動力の機能している状態を示すとともに、ナビゲーシヨンシステムやテレビの画面を兼ねるもの。
また、銀色で横長の紡錘形のスイッチ類には驚きを禁じ得ない。
よくも、これだけ刻んだものが選ばれたものだ。
日案では、曲面の使い方がさらに大胆なものだった。
ただ、モニター画面がかなり奥まっているため助手席からは見えにくいだろう。
不採用にはなったものの、いままでのTの室内に浴びせられた「どのクルマも同じじゃないか」という評価を覆す意欲的なデザインであることは間違いない。
将来の別のクルマにはこうしたものが使われてもいいと思わせる。
A案をもとにしているが、デジタルメーターの部介が大きくなり空気吹き出し口の形か変わった。
正面から見ると非土棚、であることがわかる。
中央に集中的に配置されたスイッチとエアコンのコンカラーリングは淡い紫色を基調に、ソフトで明るい2トーンとなっている。
ノンドルの正面には表示装置はない。
アームレス卜やドアポケットの斉主犬は、フロントから左右の席の移動を配慮して、センターの物入れはシ一回りこむ連続感をもたせている。
この長さのなかに収められている。
「どの程度充電されているのかを推定して、エンジンとの切り換えなどをプログラムしてやる必要があるのですが、電気の量は目に見えるものではありませんから、コンピューターで推定して管理する方式を考えたのですが、そんなことはやった経験もありません。
どんなアルゴリズム(演算の手順)にするかが非常に難しかったですね。
あらゆる使用条件を相官足して、絶対に大丈夫でないと商品として成立しないわけですから。
ところがそれがうまくいかない状態が続きました」電池の容量が足りなければ、サイズや大きくしてやらなくてはならないが、そうなるとトランクルームの容量を減らさざるを得ない。
そうなれば商品として最初に掲げた普通の乗用車としての性能・利便性の確保にはならないからだ。
バッテリーの大きさは七Oリッター。
重量は本体が約四五同だが、冷却装置などを加えると七五同ほどになる。
そのサイズで必要な性能をはじき出して車体設計に掛かった。
それがギリギリの段階まで性能が出なかった。
Oは電池を含めてハイブリッドエンジンの担当だったから、この問題の直接の当事者だ。
電池メーカーの人からは『発売までには必ず達成できる』と聞かされてましたが、もし不可能だったらアワヤ大変更ということになってしまいます」とはいえ、自分ではどうすることもできないもどかしき、それだけに性能のメドがついたときの喜びは大きかった。
このプロジェクトには、ボディの設計についてT自動織機側が企画段階から関与している。
Vど突撃隊のリーダーだったK正純が、現在ではこの全社の役員として陣頭指揮をとっているのだ。
『Gn』のころから参画してきたK(同社自動車事業部・製品企同室主担当)はこんなことを話してくれた。
「ごく初期からT本社のほうに出向いて、プロジェクトチ−ムに加わってきました。
ブルーの地色で見やすい画面だ。
音質や画質を調整するときに使う。
表示はわかりやすく操作も簡単だ。
私の担当は、ボディ設計に関することだけでなく、人間工学的な観点からの室内の構成、そして原価管理が中心、でした。
デザインが本決まりになったのが遅かったので、最後のほうでとくに忙しくなりました。
設計部門との調整や工場の準備なども大変でしたが、印象に残っているのは、室内のセンタークラスターをモジュール方式にしたことです」センタークラスタ!というのは、簡単にいえばメーターパネルと考えていい。
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